2026年9月13日

インプラント治療を検討されている方、あるいはすでにインプラントが入っている方から、このようなご質問をいただくことがあります。
「インプラントを埋入したら、将来、病院の検査でMRI撮影ができなくなるのですか?」
MRIは、脳梗塞の検査や人間ドックなどで全身のあらゆる部分を撮影するために用いられる、非常に重要な精密検査です。もしインプラントのせいでMRIが撮れなくなるとしたら、治療をためらってしまう方もいらっしゃるでしょう。
今回は、インプラントとMRI撮影の関係性について、わかりやすく解説します。
1. MRI検査の仕組みと金属の問題
まず、MRI(磁気共鳴診断装置)の仕組みを簡単に理解しましょう。 MRIは、その名の通り「強力な磁場」と「電波」を利用して、体の断面をさまざまな角度から撮影する装置です。体内の水素原子核の動きを利用するため、脳、臓器、関節などの検査に非常に優れています。
この「強力な磁場」を利用するという特性上、体内に「金属」がある場合に、以下の3つの問題が懸念されます。
2. インプラントの金属はMRIに影響する?
では、歯科インプラントはこれらの問題に当てはまるのでしょうか? 結論から申し上げますと、一般的なインプラントであれば、MRI撮影に大きな支障をきたすことはありません。
インプラントの金属は「非磁性体」
インプラント(人工歯根)に使われている金属の多くは、「チタン」や「チタン合金」です。 チタン合金は、生体親和性が高く(体に馴染みやすく)、耐食性に優れているだけでなく、「非磁性体」(磁石につかない性質)です。
MRI撮影における問題点である「吸引力」や「発熱」は、磁性体(鉄やニッケルなど、磁石につく金属)で顕著に現れます。非磁性体のチタンやチタン合金であれば、MRI撮影によってインプラントが引き寄せられたり、熱を持ったりする心配は、基本的にはありません。
したがって、インプラントが入っていても、問題なくMRI撮影を受けることができます。
3. 撮影画像への影響(アーチファクト)
安全性に問題はないとしても、画像への影響はどうでしょうか?
確かに、インプラント体や上部構造(人工歯)に使われる金属によって、お口の周囲の画像に「アーチファクト(歪みや乱れ)」が生じることはあります。 しかし、これは歯科インプラントに限ったことではありません。歯列矯正装置、金属の詰め物・被せ物、ニッケルなどの金属冠などでも同様の影響が知られています。
撮影部位やインプラントの位置にもよりますが、脳頭蓋部の診断が不可能になるほどの影響はないとされています。 脳梗塞や人間ドックの撮影などでは、一般的に問題なく診断可能です。
4. 注意が必要な「磁性アタッチメント(MA)」
インプラントとMRIの関係で、1つだけ注意が必要なケースがあります。それが、インプラントで入れ歯を固定する「磁性アタッチメント(MA)」です。
MAは、磁石の力を利用して入れ歯をしっかりと固定するシステムで、支台(インプラント側)に「キーパー」と呼ばれる金属を取り付け、入れ歯側に「磁石(マグネット)」を埋め込みます。 このマグネットがMRIの強力な磁場にさらされると、以下のような問題が起こる可能性があります。
MAの対策と現状
MAの対策としては、撮影時に「マグネット(入れ歯)を外して撮影する」ことで、磁力低下の問題は回避できます。支台側のキーパーは非磁性体のチタンやチタン合金が一般的ですので、外して撮影すれば、インプラント単体の場合と同様に安全性は保たれます。
アーチファクトについては、キーパー自体がニッケルなどを含んでいる場合があり、画像への影響が出る可能性があります。 また、MAは超高齢社会を迎え再注目されていますが、要介護状態の方などでは20〜40分間の撮影中に動かないことが困難な場合もあり、MAの利用は稀なケースもあります。
天然歯にMAを利用する場合なども含め、もし画像診断が難しい場合は、キーパーを外すなどの対応が必要になることがあります。
5. まとめ
当院では、患者さんの疑問に正確にお答えし、確実な治療を行うことを心がけています。インプラント治療と将来の医療検査について不安がある方は、お気軽に歯科医師までご相談ください。根拠に基づいてしっかりとご説明いたします。

